タイのお寺に魅せられて  ~タイ百寺巡礼ログ~

タイのお寺が好きなLuna(流転那)(旧@yayoi)です。タイで大きく人生が変わりました。タイを起点にアジアのお寺や仏像を研究中!

タイのお寺の“回廊”に注目してみる!

タイの寺院建築研究 Ⅶ

 

サワディーカー。

@yayoiです。

 

今回のタイの寺院建築研究は “ 回廊 ”と

“ カムペーンゲーウ ”といった布薩堂や

仏塔などを取り巻く ” 囲い ” について

注目してみたいと思います。

 

タイの寺院建築研究シリーズの

お寺の名称、お寺の伽藍、お寺の門、

サーラー、お堂、結界に続いて

第7回目となります。

 

“ カムペーンゲーウ ”は、日本では

お寺よりも神社にあるようですが、

前回の結界同様、聖域を囲む

垣根の様なものです。

 

以前、ワット・ベンジャマポピットの記事を

書く際、結界について調べていたときに

わからなかった言葉がこの言葉でした。

直訳してガラスの壁がどこにあるのか、

自分の写真やサイトなどを探して

わからず悩んだことがあります。

 

その翌日、たまたま読んでいた

『タイの花鳥風月』という本に

この言葉が載っていて、

お寺で目にしていて意識していなかった

低い垣根のようなものが

カムペーンゲーウだとわかってからは、

結界同様、お寺の中にあるかどうか

つい確認してしまいます。

 

 

 

 

回廊とは

 

回廊はタイ語でプラ・ラビアン(พระระเบียง)や

ウィハーンコット(วิหารคด)などと呼ばれ、

寺院内の英語表記では cloisterと表記されている

と思います。

ラビアン(ระเบียง)とはベランダのことです。

 

回廊は、岩波仏教辞典によれば、

“ 通路、垣であるとともに、

   法会の時に人の座となる “ と

書いてあります。

 

タイのお寺では、布薩堂や仏堂、仏塔の周りで

よく見かけますが、柱と屋根があり、

片側がオープンになっている

長い屋根つき廊下の様なところです。

 

 

回廊の形

 

タイでいろいろな寺院を見てきて、

回廊を特徴によって分類してみたところ

8つのタイプに分かれました。

 

一周している四角い回廊

一周している回廊とは、

回廊内に内門というか中門があり、

そこからお堂や仏塔を囲んで閉じている

ものをこれに分類しました。

形は四角と丸があります。

 

下の写真はワット・スタットの

伽藍図ですが、

このお寺は仏殿の周囲を

四角で一周している

回廊があります。

下の地図の青い〇で囲った部分です。

 

この部分のジオラマが

お寺の中にありました。

 

実際の回廊の様子です。

 

次はワット・アルンの

回廊の様子です。

 

ワット・マハータート

伽藍図と回廊の様子です。

伽藍図の方は青い丸の中が

布薩堂と仏殿を囲んだ回廊です。

 

ワット・サケート

伽藍図と回廊の様子です。

伽藍図の方は青い丸の中が

布薩堂を囲んだ回廊です。

 

一周している丸い回廊

一般的に丸い回廊は、仏塔の周りを

囲むことが多いからか、四角に比べ目にする

機会が少ないように思います。

ワット・ラーチャポピットの仏塔の

周囲には回廊があります。

回廊と仏塔を外側から見たところです。

 

回廊の中にある出入口から入ります。

回廊内に入るための出入口が2か所、

お堂に連なる出入口が2か所ある

形の回廊です。

 

目の前の仏塔が大きすぎて全体を撮ることが

できません。

 

回廊の内側部分です。

歩くための廊下といった役割は

ないように見えます。

 

ナコンパトム県にある

ワット・プラパトムジェディー

大仏塔の周囲に回廊があります。

 

回廊の外側には仏像が祀られています。

 

回廊に設置された出入り口から

回廊内へと入って行きます。

 

回廊の内側に入って撮った回廊の様子です。

 

ここの地図には回廊とは記されていませんが、

中央の丸い内側の円が仏塔で、外側の円が

上の写真の回廊です。

 

仏塔は階段を上ったちょっと

高いところにあります。

 

仏塔の脇にもベランダのように回廊が

張り巡らされていて一周ぐるりと歩く

ことができます。

 

そこから下の方を見ると周囲の回廊の

様子が見えます。

 

お堂に連なる回廊

お堂の南北、または東西に向かって

お堂の左右からでて囲むタイプの

回廊です。

図で見るとこんなイメージです。

 

ワット・ベンジャマポピット

代表的な例だと思います。

 

このワット・ベンジャマポピットとそっくりな、

お堂の左右からでて囲むタイプの回廊を

持つお寺がワット・プラシーマハータートです。

 

外回廊・内回廊が存在するお寺

ワット・ポーは

写真の②が外回廊、①が内回廊です。

 

外回廊は、囲んで1周している回廊

ではありません。

内側に仏像を祀ってあって、

回廊の前が中国庭園のような

雰囲気になっています。

 

中回廊の壁にある、外回廊の庭部分から

中回廊へと出入りする出入口です。

 

中回廊へ入ります。

 

入ると中回廊は布薩堂を1周囲んでいます。

 

回廊の東西南北にお堂がある回廊

東西南北にお堂がある四角い回廊を持つ

お寺の代表は、上記のワット・ポーです。

 

上の伽藍図上の②~⑥は回廊の東西南北の

お堂を表わし、それぞれ仏像が祀られて

います。

各お堂は、下の写真の様に回廊と

垂直に交差するような形で建てられています。

 

②③は東側のお堂で、ここだけ

前方ポーチと後方ポーチの二部屋が

あり、それぞれの部屋に仏像が

祀られています。

 

④は南側、⑥は北側、⑤は西側と

それぞれのお堂に違う形態の仏像が

祀られています。

 

この回廊や布薩周りの様子を私が

詳しく書いた記事です。

www.yayoi-thainootera.net

 

そして、もう1つ東西南北にお堂がある回廊を

持つお寺が、同じく上記の、丸い回廊がある

ナコンパトム県の

ワット・プラパトムジェディーです。

伽藍図に方角を入れました。

 

南側のお堂は、お堂内撮影禁止ですが、

大仏塔が修復されるまでの

経過を表わす絵が描かれたお堂です。

(下の写真③)

 

他のお堂には形態の違う仏像が

祀られています。(下の写真②④)

東側は手前の部屋に仏像が祀られ、

奥の部屋は大仏塔の仏像に繋がる舎利塔が

祀られています。(下の写真①の2枚)

 

お堂の中にある回廊

これは回廊と呼んでよいのかわかりませんが、

ワット・チャナソンクラーム

布薩堂内に入ると

左右に大きな柱が立っていて、

参拝するところには赤いカーペットが

敷かれています。

 

その横は回廊状になっています。

 

回廊からご本尊の後ろに抜けることが

でき、布薩堂内を一周することができます。

 

アユタヤのワット・パナンチューン

布薩堂の横の大仏のお堂は

大仏を中心に回廊状になっていて、

一周することができます。

 

仏像などが祀られています。

 

2011年に訪れた時は、たまたま仏事の日で

僧衣がたくさん置かれていました。

 

お堂の周りにあるベランダ状の回廊

このベランダ状の回廊とは、ベランダの様に

お堂から直接出られるような形ですが、

仏像などが祀られていることはなく、

廊下を歩くように

お堂の周りをただ一周することができます。

いろいろなお寺でよく目にします。

 

ウボンラーチャタニー県の

ワット・プラタートノーンブア

美しい布薩堂の周囲をゆっくりと

一周することができます。

 

ワット・サパーンは2階に布薩堂があります。

 

建物の2階にお堂がある場合は、

周囲が一周歩けて、中央にお堂がある

というスタイルが比較的

多いように思います。

 

トンブリーにあるワット・アモンキーリー

は洪水の後、2階に布薩堂を作ったお寺です。

 

ここもベランダの様になっていて

一周することができます。

 

ワット・カチョンシリ

十字型のお堂の周囲に、お堂に沿った形の

ベランダ状の回廊があり、一周することができます。

 

その回廊部分に結界が設置されています。

 

2階建ての回廊

トンブリーにある

ワット・プラユラウォンサワートの

回廊は珍しいと思います。

まず、仏塔の周りに丸い回廊があります。

そして仏塔の周囲の少し離れたところに

2階建ての回廊があります。

 

仏塔の周囲の回廊へは階段を上がって行きます。

初めて行ったときに迷っていたら、お坊さんが

連れて行ってくださいました。

 

階段を上がりきると

仏塔の周りを一周することができる

回廊です。

 

この回廊から、下にこの仏塔の建物の外側を

一周する回廊が見えます。上から見ると

回廊の上がさらに回廊になっているのが

見えます。

 

こちらの方の回廊は一旦、仏塔を降りなければ

上がれません。

仏塔を降りて下に行き、

回廊部分を内側から撮りました。

 

この回廊の2階部分にあがる階段です。

 

仏塔がきれいに並んでいます。

 

布薩堂や仏殿を見渡すことができます。

 

一方、この下の回廊部分は

回廊として歩くようには

なっていないようでした。

 

この2階建て回廊部分を外側から撮りました。

 

 

回廊の役割

 

回廊には須弥山をとりまく山や海の層の代わり

という世界観もあるようですが、

実際にはどのように使われているかを

見てみます。

 

仏像を祀る

一般的には仏像が祀られています。

 

ギャラリーの様に仏像が祀られている

ところもあります。

 

壁画や扉に美しい絵が描かれている

ここまで美しい壁画が描かれている回廊は

珍しいと思います。

 

仏像が祀ってある間に見える扉に

美しい絵が描かれているお寺もあります。

 

学習の場として使う

子供たちの学習やお坊さんから学ぶ

姿などを見かけることもあります。

 

僧侶にお布施をして、読経を聞くための場に

なっていることもあります。

 

お坊さんがお勉強されていることも

あります。

 

大学の授業の一環の様ですが、

仏像を模造する学生さんたちを

お見かけしたこともあります。

 

作業や物を保管する

作業が進められていることもあれば、

物が保管されている場合もあります。

 

納骨堂になっている

仏像が祀られているところの下は

納骨堂になっているようです。

 

 

カムペーンゲーウとは

 

タイのお寺でよく見かける

お堂周囲の低い塀のようなものを

カムペーンゲーウ

(กำแพงแก้ว)といいます。

 

カムペーンとは壁で

ゲーウはガラス、水晶、宝石

宝物などの意味があります。

 

岩波仏教辞典には記述がなくて、

ネット上に探したところ

“玉垣(たまがき)”という

言葉がありました。

 

これは神社、神域の周囲にめぐらされる

垣という意味で、玉はぎょくと読むと

宝石や美しい石という意味もあるので、

意味合いの1番近い言葉であるかと思います。

 

タイのお寺では、布薩堂や仏堂の周りでよく

見かけますが、低い塀というか垣根のような

ところです。

 

この記事の初めに書いた

ワット・スタットの伽藍図ですが、

このお寺は布薩堂の方には周囲を一周している

低いカムペーンゲーウがあります。

下の地図の緑の四角で囲った部分です。

 

美しい内門と結界が

カムペーンゲーウの

一部として施されています。

 

チャチュンサオ県の

ワット・パークナムジョーロー

布薩堂もカムペーンゲーウも金色一色です。

 

こちらナコンナーヨック県の

ワット・カオトゥリアンは

布薩堂もカムペーンゲーウもピンクです。

 

カムペーンゲーウの上には

ナーガが施されています。

 

チョンブリー県のワット・ノーンヤイは

カムペーンゲーウの内側に

ハヌマーンが施されていました。

 

スリン県のワット・ブーラパーラームの

布薩堂周囲のカムペーンゲーウは

ナーガが施されていて大変美しいです。

 

以上、お堂や仏塔の周囲にめぐらされる

回廊やカムペーンゲーウを見てきましたが、

1つ似ているようで違うものがあります。

それが、第4回目の記事に書いた

サーラーラーイ(ศาลาราย)です。

 

礼拝堂や布薩堂の周りに

並んでいる戸建てのサーラーで、

参拝者が座ったり休憩したり、

説法を聞いたりすることができる場所ですが

お寺によって、細長いサーラーは

回廊の様にも見えます。

 

ワット・ウォラジャンヤワートは、

布薩堂を囲んで長いサーラーが

あり、納骨堂になっているようです。

長いので一瞬、回廊かと見間違えました。

 

 

回廊は仏像のためのギャラリー

 

以前書いた記事の

50番のワット・ベンジャマポピットには

回廊があって、記事内では回廊内は

さっと歩く程度にしかご紹介していませんでしたが、

52体の仏像が祀られているというか

展示されています。

 

きれいに並んでいる仏像は

すべてブロンズ製で招来された仏像や

博物館の仏像から大きさをそろえて

造られたもののようです。

 

座像と立像が交互に並べられ、

博物館の様な、ギャラリーの様な

回廊になっています。

 

そこで今回の回廊の記事の

まとめとして、その仏像を

ゆっくりと眺めてみようと思います。

こちらは後日、別記事でご案内いたします。

 

お読みいただきありがとうございました。

@yayoi