タイの寺院お庭樹木研究 Ⅴ
サワディーカー。
Luna(流転那)です。
タイまたは仏教に関連のあるお庭やタイの樹木を
散歩しながら研究するシリーズの5回目です。
今回の5回目は、
タイの寺院や街中でもよく見かける植物の中で
特に仏教やタイと所縁が深いと感じる
樹木や植物にフォーカスしてみたいと
思います。
樹木を祀るという信仰
タイでは、寺院の敷地内のみならず街中ででも
三色の布で巻かれた木を目にすることが
多いかと思います。
一方、日本では、神社で
神が宿る “ 神木 ”として
注連縄(しめなわ)が巻かれているのを
よく見かけます。
日本では珍しくガネーシャが祀ってある
お寺がありますが、その寺院の敷地内にある
天然記念物のカヤの木に
しめなわが巻かれていました。
タイでは、木に布を巻くだけでなく、
木の近くにたくさんのお供えが
されていたり、小さな祠が
建てられていることもあります。
これらは寺院内にあった木ではなくバンコクの
街中、例えばレストラン内の敷地や通りで
みかけたものです。
このような信仰は
菩提樹をはじめ、後年しだいに、
特に巨大化した樹木は神秘化され、
“偉大なる悟り” やそれを得たものの
象徴となったことの表れではないかと思われます。
布で巻かれたタイの樹木
また、もう1つ考えられるのは、
木に精霊が宿るという信仰があることから
いわゆる “聖樹” として木に布を巻いて
いるということです。
私が実際にお寺で見かけた樹木を
とりあげてみます。
ゴムの木
学術名Hevea brasiliensis
ยางพารา(ヤーンパーラー)
クレット島のワット・サウトントーンにあった
樹齢200年のゴムの木です。
サトゥーの木
学術名Crudia chrysantha (Pierre) K.schum
ต้นสะตือ (トン・サトゥー)
ラヨーン県のワット・ルムマハーチャイチュムポンに
ある樹齢300年のサトゥーの木です。
タイが現在のミャンマーであるビルマから
侵略されていたころ、タークシン王が
軍を率いて西側から都を打ち、ラヨーンに着き、
馬をつないで大きなサトゥーの木の根元で休んだのが
この辺りだという言い伝えがあります。
東南アジアに生息するマメ科の植物です。
タキアンの木
学術名Hopea odorata Roxb.
ตะเคียน(タキアン) または
ตะเคียนทอง(タキアントーン)
メータキアンが宿るとされ、
お寺で祠などに祀られていることも多いタキアンの木。
アユタヤのワット・ナーンクイでは祠があります。
敷地内にある木はまだ細い木でした。
バンコクのワット・パトゥムワンにある
タキアンの木もまだ細いです。
私が以前、このお寺について歴史などを
書いた記事です。
メータキアンを祀った神社がバンコクの王宮
近くの公園内にあります。
中に祀られているタキアンの木です。
私がこちらを参拝して書いた記事です。
thai-yayoi-buddhism.hateblo.jp
サラブリー県の「市の柱」は、珍しくタキアンの木で
できています。
仏教やタイとご縁のある樹木
次は、タイの街中や寺院にあって
特に気づかないけれど、
仏伝の中にでてくる樹木を
いくつか取り上げてみようと
思います。
タマリンドの木
学術名Tamarindus indica L.(Amla cinca)
ต้นมะขาม(トン・マカーム)
仏教では、学林樹木といわれるものが
あるそうで、その1つがタマリンドです。
お釈迦様は弟子たちと
よくこれらの林の中の木の陰で瞑想をし、
説教をしたと言われています。
タマリンドはタイ料理にもよく使われています。
バナナの木
学術名Musa spp.
กล้วย(クルワイ)
バナナの実は多産の象徴だそうです。
また、仏教の五蘊(ごうん:色、受、想、行、識)を
芭蕉に例えるそうですが、芭蕉とバナナの木は
同じ芭蕉属ではあるものの、果実が食用種であるものを
一般的にバナナと呼ぶようです。
バンコクのチャイナタウンにあるお寺、
ワット・トライミットの布薩堂の前に
あるバナナの木です。
オンヌットの農園にあったバナナの木です。
パタヤの友人の家にあったバナナの木です。
タイの「市の柱」とタイの国花
今回最後の樹木は、仏伝には直接
関連はないかと思いますが、
タイの国花、ゴールデンシャワーこと
ナンバンサイカチです。
ゴールデンシャワーの木
学術名Cassia fistula Linn.
ราชพฤกษ์ (ラーチャプルック)
ชัยพฤกษ์(チャイヤプルック)
ラーチャとは王、チャイとは勝利、
プルックは樹木です。
つまり、王の樹、勝利の樹という意味を
表わします。
タイには、各県ごとに、「市の柱」という
ものを、祠を建てて、祀っています。
タイでは、サーン・ラックムアン
(ศาลหลักเมือง)と呼ばれるものです。
昔は、国の守護神を1本の木の柱で象徴し、
木柱は国の崩壊を防ぐ国の礎として祀られ
県ごとに建てられています。
その柱を作るのに、この勝利の樹である
チャイヤプルックの樹が使われることが
多いのです。
チャイヤプルックの樹でできた
バンコクの「市の柱」です。
バンコクの「市の柱」の祠の横には
参拝した人たちが、三色の布を巻くための
樹があります。
他にもチャイヤプルックの樹でできた
「市の柱」は、例えば、向って左から
ウボンラーチャタニー県、
アムナートジャルーン県
ジャンタブリー県などにもあります。
私は地方を訪れる時には、この「市の柱」を
参拝し、このブログのサブページ「タイと私と仏教と」
に記事を書いています。
thai-yayoi-buddhism.hateblo.jp
今回の記事は、
書籍「仏典の植物事典」
「タイの花鳥風月」「東南アジア樹木紀行」
などを参考にして書きました。
お読みいただきありがとうございました。
Luna(流転那)