タイのお寺に魅せられて  ~タイ百寺巡礼ログ~

タイのお寺が好きなLuna(流転那)(旧@yayoi)です。タイで大きく人生が変わりました。タイを起点にアジアのお寺や仏像を研究中!

タイのお寺で釈尊の生涯にゆかりある樹木を眺める

タイの寺院お庭樹木研究 Ⅵ

 

サワディーカー。

Luna(流転那)です。

 

タイまたは仏教に関連のあるお庭やタイの樹木を

散歩しながら研究するシリーズの

今回の6回目と次の7回目は、

ブッダのライフイベントに沿って、

ブッダや仏伝に関係のある植物を

お寺の中に見つけて眺める

という回になります。

 

 

 

 

ブッダのライフイベントとは

 

仏伝の中でも大切なブッダの一生ですが、

大きなライフイベントと呼べるものは

4つあります。

 

まずは、誕生。

そして出家、解脱、入滅。

 

今回の6回目と次の7回目は、

仏伝の中にでてくる植物を見つける

ということが記事のメインテーマなので、

そのようなライフイベントを時系列に追いながら

樹木にフォーカスしていきます。

 

前編の6回目は、釈尊の誕生から解脱まで、

後編の7回目は、成道後と伝道から入滅まで、

タイのお寺でそれらの植物を探し

それぞれ紹介していこうと思います。

 

なお、このブログ内では、長いこと

呼び名をブッダか、お釈迦様かゴータマ・ブッダか

釈尊か、悩みつつもブッダで統一していますが、

今回のシリーズに限り、前編の記事の

誕生から解脱までは、釈尊と呼ぶことにし、

後編の記事の解脱以降は呼び名をいつも通り

ブッダとすることにします。

ブッダとは、目覚めた人、真理を悟った人の

意味です。

 

 

釈尊の生誕にまつわる樹木

 

まずは、最初のライフイベントである誕生ですが、

釈尊の誕生の際、母である受胎したマーヤー夫人が

里帰りをするのですが、途中、ルンピニー園という

サーラー樹におおわれた森を訪れたそうです。

 

『森の中に進み、咲きほこる無憂樹に近寄り、

 垂れ下がる枝に手を伸ばすと陣痛が起こり、

 右脇腹から釈尊が誕生し、誕生すると

 7歩歩きました。』

 

インドから西域地方を経て、中国

韓国、日本などに伝わった大乗仏教では、

釈尊の誕生の木は、無憂樹だと

言われています。

 

一方、タイをはじめ東南アジアなど、

南インドからセイロンに伝わり、

展開した上座部仏教では、

釈尊の誕生の木は、サーラー樹だと

言われています。

 

私もお寺で出逢ったタイ人によく、

ブッダが生まれた時の木の名前は?と

尋ねてみましたが、サーラー樹という

答えしか返って来ません。

 

ここでは、サーラー樹におおわれた

森の中の無憂樹の木に手を伸ばした

ということにしようと思いますが、

サーラー樹は、入滅の時の沙羅双樹

として、後編で紹介することにして、

この前編での釈尊誕生の樹木としては、

アショーカ樹(無憂樹)を紹介します。

 

アショーカ樹

学名 Saraca indica, Linn. マメ科

和名 無憂樹(む(ゆ)うじゅ)

英名 Asoka Tree

タイ名 ต้นอโศก(トン・アソーク)

バンコクにはアソークという駅もありますが、

タイ語辞書によるとこのアソークは無憂樹。

 

サンスクリット語でアは否定語、ソーカは悲しみという

意味なので、悲しみや憂いがないことという

意味になります。

一方、タイ語のソーク(โศก)自体は悲しみ、悲哀という

意味があると同時に植物の名とも

書かれているのでいずれにしろサンスクリット語

由来の言葉であるようです。

 

ワット・テープシリンの無憂樹です。

 

アショカノキと呼ばれるものがもう1つあります。

こちらはバンレイシ科で別の木です。

こちらも無憂樹と呼ばれることがあるそうです。

 

 

少年時代の初めての瞑想

 

釈尊と瞑想と言えば、悟りと菩提樹が頭に

浮かびますが、釈尊の初めての瞑想は、

スッドーダナ王が催した

種まきの祭礼(農耕祭)でのこと。

 

『祭りの間、釈尊はジャンプー樹の木陰で

 農民たちを観察しました。

 釈尊が座っている木の下だけは、

 釈尊を守るように、

 木の影が動かなかったそうです。』

(こちらに描かれているのは少年というより、

 幼児のように見えます。)

 

ジャンプー樹

学名 Syzygium cumini (Eugenia cumini)フトモモ科

和名 ムラサキフトモモ

漢名 閻浮樹(えんぶじゅ)

タイ名 ต้นหว้า(トン・ワー)

 

寺院内で撮った木の写真はなかったので、

寺院内の壁画の中に探しました。

 

 

結婚、出家を経て求道へ

 

釈迦族の王子として誕生した釈尊は

成長し、結婚し、

息子であるラーフラをもうけました。

 

釈迦族の王位継承者として

シュッドーダナ王から大いなる愛情を

注がれ、世俗の荒波からは遠ざかった

生活をしていました。

 

『しかし、ある日城外に散策に出かけた際に

 老人、病人、死者、出家修行者を目のあたりに

 します。これがその後の釈尊を大きく変える

 四門出遊です。』

 

『そして、愛馬カンタカに乗り出家し、

 剃髪します。』

 

 

求道への道のりを歩き始めた釈尊

 

故郷である釈迦族の地を後にして

釈尊はヴァイシャーリーにて、

仙人の下で修行を始めます。

 

その後、場所を変えながら、

ウルヴェラーにて、

6年とも7年とも言われる苦行生活に

入ります。

 

出家前の快楽的な世俗の生活と、

この厳しい苦行との二つの両極を知って、

それらを捨て去ることにして、

釈尊は苦行生活を終えます。

 

「苦行を放棄した釈尊は村の娘スジャータから

 乳粥の供養を受けて体力を回復させ、

 悟りに向ってふみだします。」

 

スジャータは出来上がった乳粥を木の精霊に

捧げようとして、バンヤン樹の下に座っていた

釈尊を精霊と間違えて、乳粥を差し出したと

言われています。

 

バンヤン樹・アジャパーラ樹・ニグローダ樹

学名 Ficus benghalensis クワ科

和名 ベンガルボダイジュ

英名 Banyan Tree

タイ名 ไทรนิโครธ(サイ・ニコラトー)

*アジャパーラというのは、木についていた

 名前という説もあります。

 

バンヤン樹はクワ科イチジク属の樹木のうち、

枝から気根をたらし、奇妙な樹形になるものを

いうそうです。

 

*この気根(きこん)という言葉の意味が

 よくわからなかったので、調べて見ると

 植物の地表に出ている茎あるいは幹から出て、

 空気中に現れている根、幹の一部とありました。

 同時に仏語の意味もあり、すべての人に備わる、

 教えを受けて発動する能力・資質、根機、

 機という意味もあるそうです。

 

 

上の絵でも、釈尊が座っている上に描かれた

木は、枝から気根をたらしたような

形に描かれているので、このバンヤン樹に

見えます。

 

ワット・ホンを参拝した時にみかけた

この木はバニヤンの木だと思います。

 

寺院内ではありませんが、

以前宿泊したパタヤの隣の

ジョームティエンビーチにある

ホテルの庭にあった大きな

バニヤンの木です。

 

このホテルについて

私が書いた記事です。

note.com

 

Banyan

ここで、Banyan(บันยัน)についてですが、

一般的にバニヤンツリーと呼ばれるものには

いくつか種類があります。

広義では、ベンガルボダイジュに限らず、

ガジュマルなど他のイチジク属の

樹木も含み、学名からベンガレンシスと

呼ばれることもあるそうです。

 

タイ名では、ไทร(サイ)がつく木に

該当しますが、サイがつく木は

今回の乳粥の木、ベンガルボダイジュ

ไทรนิโครธ(サイ・ニコラトー)の他に

いくつかの種類があります。

 

ต้นไทร(トン・サイ)または

 ไทรย้อยใบแหลม(サイヨイバイレーム)と

呼ばれるものはタイの街中でよく見かける

樹木です。

 

学名 Ficus benjamina クワ科

和名 ガジュマル、シダレガジュマル ベンジャミンゴムノキ

英名 Java willow、Java fig tree

 

*東北地方のピマーイにあるサイガーム(ไทรงาม)が

 有名だそうです。ガームは美しいという意味です。

 

寺院内で撮った写真ではないのですが、

サイの木は、マハナコンビルの

敷地内にあります。

 

以前、私が書いたマハナコンビル周辺の

合掌スポットについての記事です。

www.yayoi-thainootera.net

 

ไทรย้อยใบทู่(サイヨイバイトゥー)

学名 Ficus macrocarpa クワ科イチジク属

これもガジュマルです。

 

私が撮った写真はありませんが、

こちらのウェブサイト内に写真がありました。

https://www.wattano.ac.th/wattano/web_saunpluak/My%20Hip/113.html

 

 

悟りの場を求めて

 

スジャータの村を後にした

釈尊は、ナイランジャナー河のほとり近くで

河の流れで身を清めたそうです。

そして、瞑想が始まりました。

 

「農夫からもらい受けたクシャ草

 敷いて、アシュバッタ樹の木の下で

 幹を背にして東に向かって座りました。」

 

河のほとりでクシャ草を敷いて瞑想する

釈尊のイメージを描いたものを

ラヨーン県のワット・ナムトックタンマロット

で見つけました。

 

クシャ草(吉祥草)

学名 Desmostachya bipinnata イネ科

インドの宗教儀礼の中で様々に用いられ、

聖草とされているそうです。

 

『仏典の植物事典』の中に写真が

ありました。

 

瞑想する釈尊には、悪魔の誘惑や妨害が

ありますが、それらを退け

ついに釈尊は悟りを開きます。

アシュバッタの木の下で、

釈尊35歳の時のことです。

 

アシュバッタ樹(Asvattha Bodhi-vrksa)

学名 Ficus religiosa  クワ科イチジク属

漢名 菩提樹

和名 インドボダイジュ

英名 Sacrid Fig Tree、Bodhi Tree など

タイ名 ต้นโพธิ์(トン・ポー)

 

タイでは、一般的にトン・ポーと呼ばれていますが、

お寺によっては、表示にトン・ポーランカーと

表示されていることもあります。

ランカーはスリランカの意味です。

 

トン・プラシー・マハー・ポーと

表示されているところもありました。

プラシーは吉祥を意味し、マハーは偉大なるという

意味です。

*いずれにも敬称や仏教用語によく使われる接頭語です。

 

アシュバッタ樹はピッパラとも

呼ばれるそうです。

解脱に至る真の悟りと心の平安、

つまり、Bodhi(ボーディ)を得たので

ボーディ→菩提、菩提樹と呼ばれるようになりました。

 

ここで、菩提樹についてですが、

日本のお寺にある菩提樹と呼ばれているものは、

インドボダイジュとは違う木です。

 

菩提樹

学名 Tilia miqueliana(シナノキ科)

和名 コバノシナノキ

臨済宗の開祖栄西が中国から持ち帰ったと伝えられている

中国原産の木です。

冬に深大寺を参拝した時に撮りました。

 

南国のインドボダイジュの木はすべてが落ちている

状態はみたことがありませんが、冬のシナノキは

すべて葉が落ちていました。

 

インドボダイジュに至っては、写真がたくさん

あり、どれにしようか迷いましたが、

まず1番は、ワット・ポーの菩提樹です。

 

ワット・ポーというのは通称で、

正式名称は

วัดพระเชตุพนวิมลมังคลาราม ราชวรมหาวิหาร      

(Wat PhraChetuphon Vimolmangklararm

 Rajwaramahaviharn)ですが、

ポー(โพธิ์)とは菩提です。

 

このお寺では有名な寝釈迦仏のお堂の隣に、

大きな菩提樹があります。

 

ワット・アプソンサワンの菩提樹の

根元はどっしりとしていました。

 

タイでは、葉が心臓の形をしていると言われます。

 

ワット・アソーカラームでは

僧侶たちが掃き集めた菩提樹の枯れ葉を

見つけました。

(この上に座って瞑想したら、お釈迦様の教えが

 もっとよくわかるかしら?と思ってしまいました。

(個人的に祈りを捧げる時はお釈迦様とお呼びしています))

 

ワット・ベンジャマポピットの菩提樹も

大樹です。

 

ワット・プラシーマハータートの菩提樹は

池の中の小島にあります。

 

仏像の頭を抱え込むことで有名な木は、

アユタヤーのワット・プラマハータートの

菩提樹。

 

個人的に好きだったのは、

以前通っていたタイ語学校の敷地にあった菩提樹です。

 

こんなに太い幹でした。

 

3階から撮った葉の部分です。

(私が木の写真を夢中になって撮っているのを見ていた先生が、

 3階から落ちないかと心配してくださいました)

学校は後に取り壊され、ビルになってしまいました。

菩提樹は大きなトラックで運ばれていきました。

 

他にもたくさんあるので、お寺で撮りためたものの中から

ちょっと集めてカヴァー写真にしました。

 

最後に、枯れて落ち葉になっても

金色に輝いている美しい菩提樹の葉。

家の近くのお寺の前で見つけたものです。

 

 

釈尊が悟りを得るまで ~紹介した樹木

 

生誕の木 アショーカ樹

初めての瞑想の木 ジャンプー樹

乳粥の木 バンヤン樹 

悟りの木 アシュバッタ樹、クシャ草

 

お読みいただきありがとうございました。

Luna(流転那)