
タイの寺院仏像研究 Ⅴ
サワディーカー。
Luna(流転那)です。
タイのお寺が好きで、
備忘録のようなお寺の巡礼記録以外に、
タイのお寺や仏教に関することを
9回シリーズで観察するという
自由研究のようなことを
やっております。
前回までは、お寺の回廊や寺院内にある博物館を
歩きながら、どんな形態の仏像があるかを
眺めてきました。
5回目の今回は、その形態の中で、
私が最もタイらしさを感じ、
愛してやまない “横たわる仏像” に
フォーカスをあててみます。
このブログの1番目には何度も
足を運んだお寺ということで、
当時のタイ語学校があった駅に隣接する
ワット・フワランポーンを選びましたが、
2番目に選んだのは、ワット・ポーでした。
その理由は寝釈迦仏があることで
タイでも最も有名なお寺であることと、
記事のタイトルにしたように、初めて見たときに
本当に寝ている姿の仏像に驚愕したのです。
初めて横たわる仏像を目にした当時の私は、
後に仏教に興味をもつ人生に
なっていくとは夢にも思わない、
涅槃なども考えることもない…
そんなお寺や仏教から縁遠い人間でした。
それで、暑い南国ではお釈迦様といえども
身体を横にするのかなあ…と
ただ驚いたのです。
でも初めてその姿を見たときに、
何ともいえない安堵の気持ちが
身体の中を流れたのでした。
寝釈迦仏と涅槃仏は違うもの??
寝釈迦仏と涅槃仏は違うという人と
同じという人がいます。
以前、日本の大学の中国仏教専門の
先生に、寝釈迦仏と涅槃仏は区別するのかと
伺ってみたら、基本的には
区別をしないという答えが返ってきました。
確かに、岩波仏教辞典を見ると
“涅槃像”という言葉は載っていますが、
寝釈迦仏とか涅槃仏という言葉は
見当たりません。
“ 涅槃像 釈迦がクシナガラ城のバッダイ河の
ほとり沙羅双樹の間に入滅する様子を表したもの
(岩波仏教辞典より)“
そこでタイやミャンマーの人に違うかと
尋ねると、まず違うという
答えが返ってくるのですが、
何が違うといえば
横になっている姿(寝ている)と入滅した姿です。
つまり生きている間の姿と、死後の姿。
そのように区別したら、確かに違う
といえるのではないでしょうか。
タイで私が聞いたところによれば、
寝釈迦仏は、一般的には目が開いていて
足の裏には煩悩が
描かれている姿だそうです。
有名なバンコクのワット・ポーの
寝釈迦仏もそのような姿をしています。


一方の涅槃仏は、一般的には目が閉じていて
煩悩が消えたお姿なので足の裏には煩悩が
描かれていないそうです。
表記はありませんが、チョンブリー県の
ワット・ナンタワンの外にある
仏像は、目が閉じられていて、
足の裏には何も描かれていません。



これからいくつかの
“横たわる仏像”の形態をみていきますが、
タイ語では、横たわる仏像のことを、
プラ・ノーン(พระนอน)とか
プラ・プッタサイヤーㇳ(พระพุทธไสยาส)
と呼びます。
ノーンもサイヤーㇳも寝る、眠るという意味ですが、
ノーンは日常的に使われる言葉で、寝る、眠る、
寝そべることです。
プラ・プッタサイヤーㇳは、
英語ではReclining Buddhaと訳されていて
よく表示などに記されています。
*1番上は、ワット・ポーの表示です。

仏像は、プラ・プッタループ(พระพุทธรูป)
なので、仏像でプラとかプラ・プッタがつくときは、
寝釈迦仏のように、〇〇仏と使われることが
多いです。
横たわる仏像にいくつの形態があるか
いくつの形態があるか調べるのに、まずは
ワット・プラパトムジェーディーの
回廊の仏像66体と
ワット・グラトゥムスワプラーの
博物館内の仏像81体から
横たわる仏像だけをとりだしてみました。
ワット・プラパトムジェーディーには
5体、ワット・グラトゥムスワプラーには
6体ありました。
次に、見比べるため、同じ形態の仏像同士を
上にワット・プラパトムジェーディーの仏像を
下にはワット・グラトゥムスワプラーの
仏像をそれぞれ上下にコラージュしました。
いわゆる王道のリクライニングブッダこと
プラ・プッタサイヤーㇳ(พระพุทธไสยาส)は、
ワット・グラトゥムスワプラーにだけ
ありました。

それから、私が保存している
横たわる仏像の写真をみながら
特徴別に分類してみました。
その結果、今のところ、私の中では、
横たわる仏像は9形態あるという
結論を出してみました。
1つずつ見ていこうと思います。
形態別にみる寝釈迦仏
まずは、寝釈迦仏からみていきます。
5形態あります。
<横たわる仏像1> 夢をご覧になったブッダ

ปางสุบินまたはปางทรงพระสุบิน
(パーン・スビン、パーン・ソンプラスビン)
英語表記:Dreaming
「苦行をやめたブッダは5つの夢を見た」
右手を枕に頭をのせ耳を支え、左手は身体に
沿って伸ばしている姿勢ですが、
上下で若干、右手の形が違います。
<横たわる仏像2> 予言するブッダ

ปางทรงพยากรณ์
(パーン・ソンパヤーゴン)
英語表記:Making a prophecy
「ブッダはアーナンダが阿羅漢の境地に達するだろうと
予言した」
頭を枕にのせ、右側を下にして右手は腹部の前で
下から左腹部に斜めにおく、
左手は身体の左側に沿わせる姿勢で
上下とも同じような形で横たわっていますが、
下の方は、やや伏せ目です。
<横たわる仏像3> 最後の説法をするブッダ

ปางโปรดสุภัททะ
(パーン・プローㇳスパッタ)
英語表記:Preaching his final sermon to Subhadda
ปางปัจฉมโอวาท
(パーン・パッチョムオーワーㇳ)
英語表記:The Buddha Preaching His Last Sermon
上は、「出家者(仏教徒ではなかった)であるスパッタが
ブッダが涅槃に入るときいてやって来たときに
最後の弟子として教えを説く」
下は、「さとりを開いてからのブッダは毎日5つの仏法を
実践し、その教えをまとめて、涅槃に入る前の日に
弟子に最後の説法で説いた」
右手を下にして横になり頭を枕にのせ、
左手は身体の左側に沿わせ、右手は上にあげ指を丸めて
説教をする姿勢で、同じように見えます。
(上は写真の角度で指を丸めているのがよくみえませんが)
英語での表記はどちらも
最後の説法となってはいますが、
上と下では、最後の弟子に説いた説法なのか、
ブッダ最後の説法なのか、という違いがあるような
気もします。形態はほぼ同じなので
ここでは1つの形態とみなしました。
ここまでの3つは、私が今まで訪れたお寺の中の
横たわる仏像には、実際に見たことがない形態です。
<横たわる仏像4> アスリンタラーフーに説法をするブッダ

ปางโปรดอสุรินทราหู
(パーン・プローㇳアスリンタラーフー)
英語表記:Preaching to Asurindrahu
「ブッダがシュラーヴァスティーの町のお寺に
滞在していた時に、ブッダよりも体が大きな
アスリンタラーフーという副王がやってきたが
謙虚さをみせることを拒んだので、ブッダは
そのプライドを下げるために、体を大きくして
示し、カマのように横たわり説法した」
右腕を枕に横になり、左腕は身体に沿うような
姿勢ですが、上は頭の下に枕があり、
下は枕は脇下にしかありません。
バンコクのワット・サームプラヤーには
この形態の表記がある寝釈迦仏が祀られています。

仏像には枕があります。

一方、頭の下に枕がないという点に着目して、
私が訪れたことがあるお寺の中の
横たわる仏像で、枕がなかったのは、
ジャンタブリー県の
ワット・サパーンルワックでした。
知る人ぞ知る鼻が高い寝釈迦仏です。

表記はプラ・プッタサイヤーㇳ(พระพุทธไสยาส)
になっていました。
全長56mのタイで2番目に大きな寝釈迦仏です。
大きさからしても、体を大きくして
カマのように横たわり説法した姿に
みえるでしょうか。

<横たわる仏像5> 横になるブッダ

ปางไสยาส(น์)
(パーン・サイヤーㇳ)
英語表記:Reclining
寝釈迦仏のこと。
寝ているブッダ。休息中のブッダ。
右腕を枕に横になり、左腕は身体に沿うような
姿勢ですが、ただ寝ていらっしゃる姿なので、
足が揃っていないこともあると聞いた
覚えがあります。
ここで、私が持っている写真の中から
寝釈迦仏と表記されたものを
枕と腕の関係にフォーカスしながら
特徴別に分けてみました。
枕の外側に腕があるタイプ
一般的な寝釈迦仏のイメージは、
ワット・ポーの寝釈迦仏かと
思いますが、このワット・ポーの場合、
ひじを立てて腕枕した手の甲を
枕につけていますが腕は枕の外にあります。


ワット・ゲーウジェムファーの場合も
同じタイプで、枕に頭をのせつつ、
枕の外に頭を支える腕があります。

枕の内側に腕がある
一方、枕の内側に腕があるタイプは、
下になった方の右手の角度が
様々です。
タイプ1:枕に頭をのせ、腕であごを支える。

タイプ2:枕に頭をのせ、腕は耳の横に添える。

タイプ3:枕の上に手の甲をつけ、ひじは立てずに
頭を手のひらにのせる。


タイプ4:ただ枕に頭をあずけ、手は体に沿わせる。

タイプ5:枕の上に手の甲をつけ、ひじを立てて
腕枕し、脇下にも枕がある。


タイプ6:頭の下には枕はなく、
脇下の枕と腕で頭を支える。

タイプ5と6は、アスリンタラーフーへの説法の
形態にも見えますが、特に表記はないので、
寝釈迦仏としてこちらに分類しました。
参考までに寝釈迦仏がいらっしゃるお寺です。
リンクのあるものは、以前お寺記事を書いたお寺です。
タイプ1:ワット・スアンプルー
タイプ2:ワット・ムングンゴーン
タイプ3:ワット・ウォジャンヤワート
ワット・ジェーディールワン
タイプ4:ワット・クンジャン
タイプ5:ワット・オーロサラーム
ワット・スワンナクーハ
タイプ6:ワット・プラヤイ(上段)
ワット・パイローンウワ(下段)
続きます。
お読みいただきありがとうございました。
Luna(流転那)


