タイのお寺に魅せられて  ~タイ百寺巡礼ログ~

タイのお寺が好きなLuna(流転那)(旧@yayoi)です。タイで大きく人生が変わりました。タイを起点にアジアのお寺や仏像を研究中!

タイのお寺の“結界”に注目してみる!(中編)

タイの寺院建築研究 Ⅵ (中編)

 

サワディーカー。

@yayoiです。

 

今回のタイの寺院建築研究は “ 結界” に

ついて注目しております。

今回のタイの寺院建築研究シリーズは、

お寺の名称、お寺の伽藍、お寺の門、

サーラー、お堂に続いて第6回目となります。

 

前編では、結界石についてと

タイのお寺が“ワット(วัด お寺の意味)”として

成立する前のサムナックソンという

場所について書いてみました。

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今回は、一見して布薩堂の周囲に結界石が

見あたらないお寺や、ちょっと特殊な形の結界に

注目してみようと思います。

 

 

 

 

結界石を置く儀式を待つお寺

 

前回、サムナックソンについて

王室の認可である

ウィスンカーマシーマーを受けたお寺で、

規律に沿って結界(シーマー)を結ぶと

正式にお寺になると書きましたが、

結界石が見えなくてもワットを名乗っている

お寺は結構あります。

 

これらのお寺は王室の認可を得て、

布薩堂を建て、僧侶が仏事をしながらも、

“儀式”がまだ行われてはいない場合もあれば、

結界が目に見えないだけで、お堂の下や

布薩堂周囲の壁の中に結界があるといった、

お寺によっての違いがあるようです。

 

そんなお寺の一つ、ワット・アモンキリで

かつて結界石の場所を

お坊さんに尋ねたところ、

結界石を置くための儀式をするのに

まだ資金が十分ではないと伺ったことがあります。

 

以前、私が記事で書いたトンブリーにあるお寺

ワット・アモンキリです。

www.yayoi-thainootera.net

 

このお寺は洪水を経験して、現在は2階に

布薩堂があるのですが、布薩堂の下の1階の床に

一見したら模様の様に見えますが、

結界がありました。

 

そして、外には埋める予定の9つの

ルークミニットと呼ばれる球がありました。

お寺に来た参拝者が寄付をして

球体に金を貼っていきます。

金がたくさん貼られる=儀式のためのお金が増える

そこで儀式を経て、結界石が建てられるそうです。

 

ジャンタブリー県にある

ワット・パークナムケームヌーは

訪れた時は結界石が建っていませんでしたが、

準備が進んでいるようでした。

お堂はほとんど完成していました。

 

お堂の周りに建てる結界石を囲む祠が

お堂の下にあるのが見えました。

 

外のサーラーの下に、

地下に埋める球が9つと地上にさす結界石が8つ。

(中央はお堂下に球を埋めるだけだそうです。)

 

ワット・タムカウボートでは、

結界を囲む8つの祠のいくつかは未完、

または完成形で設置されていましたが、

中に設置する予定の結界石の方は

まだ布薩堂の下にありました。

 

法輪が刻まれたピカピカの結界です。

 

お寺によって、このように結界の設置があとか、

またはチョーファーと呼ばれる屋根飾りが

あとかはわかりませんが、どちらか

または両方が欠けている場合があります。

いずれにしろ、その様な場合は、布薩堂は

完成前ということになるようです。

 

チョーファーが欠けている布薩堂です。

楕円部分が欠けている場所です。

 

以前そういったことを知らなかった時、

不謹慎にもチョーファーを

台風などで破損したのかと

思ったこともありました。

後に儀式がまだ済んでいないので、

チョーファーや結界が建てられていない

お寺があるということを知ったのでした。

 

 

結界を置くことが予定されているお寺

 

お寺によっては、

結界石を将来建てるのか、建てる場所を

違う色にして、場所を予定しているお寺を

たまにみかけます。

 

他にも結界石は建てないのか、

まだなのかわからないお寺は結構あって、

布薩堂が2階にあるところで

よく見かける気がします。

布薩堂と球がセットで置いてあるお寺も

あります。

 

 

ささずに場所を限定する結界

 

布薩堂周囲に場所を特定する場合

一般的に、結界石は布薩堂の周囲に

置くのですが、

結界を布薩堂の周囲にさすような形にせず、

プレート状の結界を置いているのを

見かけることもあります。

 

先ほどのような色分けではなく、

もう結界が置かれている場合です。

 

置いてあるところは、人が踏まないよう

表示がされています。

 

ワット・パークナムの布薩堂は、

サーラーの一部に布薩堂が

建っているというか、

布薩堂の周りをサーラーが囲んで

建っているというか、

ちょっと変わった造りをしています。

 

この布薩堂の周りには床の一部に

結界が置かれているため、人が

踏まないように周囲を目立たせています。

 

ワット・テープシリンタラワートの

布薩堂です。

 

布薩堂のまわりの芝生の中に

結界が置かれています。

 

さす形の結界と置かれる結界の

両方が採用されているお寺もあります。

ワット・プララーム9の結界です。

布薩堂の前の階段部分に置かれています。

 

一方、お堂の周囲には

さすような形で設置されています。

 

チェンマイのお寺、ワット・ラムプーンは、

私が修行に行ったとき、布薩堂にまだ

チョーファーがついていませんでした。

 

すでに設置されていた結界は法輪の形で、

さす形と置かれる形の2種類がありました。

 

 

布薩堂の壁に直接つける場合

布薩堂の周囲ではなく、

壁に直接埋め込むというか

貼り付けたような形の結界は、

結構目にするものです。

 

ワット・ボウォン二ウェートの布薩堂は、

もとは十字型の布薩堂を、隣の仏塔を造る際、

南側部分をきって、現在のT字型の

様な形となっています。

 

結界は仏塔との間の壁に埋め込まれたような

形でついているものもあれば…

 

お堂の外壁についているものもあります。

 

その他のお寺で見つけた

布薩堂の外壁に埋め込まれている結界です。

 

 

池の中の龍が結界

ワット・ナムトックタンマロットですが、

これはかなり特殊な結界だと思います。

 

布薩堂の周囲にいる龍が結界の役目を

果たしています。

 

 

お寺全体に結界をはる

前編で、日本では比叡山や

高野山は国土結界と書きましたが、

ここまでの規模ではありませんが、

タイではお寺全体に結界がはられている

ことはあります。

 

その例として、わかりやすいのは、お堂でなく

お寺の外壁に結界石が埋め込まれている

場合です。

 

ワット・ラーチャプラディットです。

 

ワット・ラーチャポピットです。

 

 

布薩堂周りの塀に埋め込まれた結界

布薩堂周りには背の低い塀が

張り巡らされていることがあります。

この塀のことをタイ語では

カムペンゲーウ(กำแพงแก้ว)

といいます。

 

ワット・ベンジャマポピットの結界は、

とても特殊な結界です。

目に見える結界の数は4か所です。

 

布薩堂とカムペーンゲーウです。

 

楕円で囲んだ中のハスの花のつぼみが

布薩堂の前側の結界です。

 

布薩堂の後ろは回廊になっているのですが、

布薩堂と回廊の間の床に結界があり、

踏まないように表示が置かれています。

 

このお寺の結界について、

私が以前書いた記事です。

www.yayoi-thainootera.net

 

その他のお寺でカムペーンゲーウに

結界が埋め込まれている例です。

 

 

2つの結界があるお寺

 

ピンクのガネーシャで人気の

ワット・サマーンは、ガネーシャと

離れた場所に布薩堂があるのですが、

古い布薩堂と新しい布薩堂の2つがあります。

 

古い布薩堂は通常は開けておらず、儀式も現在は

こちらではしないようですが、残存しています。

こちらが古い布薩堂と結界です。

 

新しい布薩堂の方の結界は、

布薩堂の壁に埋め込まれています。

 

ワット・フアスアンも2か所に布薩堂が

あります。

新しい布薩堂とその周囲の結界は

どちらも材質が珍しいステンレスです。

 

現在は儀式などは行われていない

古い方の布薩堂と結界です。

 

最後に、ワット・ノークパークタレーは

他ではあまり見かけませんが、

布薩堂の周囲とお堂下の

二か所に結界があります。

布薩堂です。

 

周囲の結界です。

 

お堂の下とお堂下の結界です。

 

以上、タイの布薩堂周りの結界の

特殊な例を挙げてみました。

 

続きます。

 

お読みいただきありがとうございました。

@yayoi